ガラガラ♪
2人だ。
ハイ、お名前は?
福島三郎だ。
えっと、あ、福島様ニ名様ですね。お二階にどうぞ。おつれ様はまだみたいです。
別にいい。
次郎は二階に上がった。
今夜は次郎の久しぶりに会う友人と飯でも食おうということになっていた。友人が選んだ店はうな鐡。歌舞伎町にある鰻の串を食べさせる店。実は次郎が兼ねてから行きたかった店リストの一つだった。
でかしたぞ福島!
次郎は独りごちた。
席に着くとメニューを見た。
文字からして旨そうだな。
串はそんなに高くないな。鰻重も2900円なら御の字だ。最後の締めにいこう。
そういえば、ここの鰻には川越って焼酎が合うとか言ってた奴がいたな。よし。
ねーちゃん、注文頼む。
ハイ。
川越の水割り。
それと。そうだな、骨せんべい、肝焼き、かしら、くりから、白ばら三本ずつ。それと椎茸、ナス焼きだ。
ハイ。
あ、すいません、肝焼き終わっちゃいました。
なんと!くそ。仕方ない、じゃそれはいい。
ハイ。
しかし、二階の座敷は割と広いな。
はい、川越と、お通し、骨せんべいです。
おぅ、骨せんべい。うまそうだ。
川越もスッキリ飲みやすいな。骨せんべいに合うな。
おう、次郎!早いな!
おう三郎。久しぶりだな。
あぁ。さぁ座れよ。
ねーちゃんビール頼む。
ハイ。
ハイ、串です。
かしらです。
白ばらとくりからです。
椎茸です。
うまそうだな。
どれどれ?
ほう、かしらは甘くて身が柔らかく、ぎっしりだ。うまい!
白ばらもくりからも柔らかくてうまいな!
椎茸も合間にちょうどいい。
高コスパだな。この串は。
ハイ、焼きナスです。
おぉ、いい感じだ。
三郎うまいなここは!
だな!
どーだ最近は?
来月から新しい会社なんだよ。
なに!そうか!それはめでたいな。
おい、ねーさん、
うまき、八幡巻き、白焼き頼む!
ハイ。
次郎はどうだ?
うーん、ぼちぼちやってるよ。
しかし、おまえの行動力はすごいよ。
ハイ、うまき、八幡巻き、白焼きです。
おお!うまそうな、うまきだ!
この、八幡巻き、甘ダレがうまそうだ!中のゴボウもいいな。
くっ、この白焼き、サッパリしてそうで、いいバランスだ。
どれどれ。
おお!このあっさりとした卵の出汁と鰻のコラボ、うまい!
そして、おお!この八幡巻き、ゴボウを蒲焼きで巻いたようなもんだな!贅沢だ!甘ダレとゴボウのコラボ、うまい!
そして、白焼きか。山椒をかけてと。
ぐお!サッパリうまい。この三品最高の組み合わせだ。俺としたことが!
うまいな!三郎!
だな!
2人のテンションは上がった。
さてと、
おい、ねーちゃん、ヒレ串と鰻重を頼む!
ハイ、畏まりました。
いやー、全部うまいなここは。しかも高すぎず。穴場だ!
だろう。
次郎、人生一度きりだぜ。
…ど、どうした三郎。
いや、なんとなくな。
ふん。
ハイ、お待たせしました。
ヒレです。
鰻重です。
おお!うまそうだ!!
このヒレ、ネギが巻かれて鰻と絶妙なバランスだ!うまい!
そして、鰻重だ。
おお、柔らかい!甘い!っまい!!
このタレご飯最高だぜ。
おお、この肝吸い、肝がでかいな。
いやでも精力旺盛になっちまうぜ!
歌舞伎町だけにな!はは!
ゲフッ
いやー、うまかったな。
三郎、いい店をありがとう。
いいってことよ。
おい、ねーさん、会計頼む。
はい、17000円です。
2人で8500円ずつか。まぁそんなもんだろうな。
しかし、うまかったな。
これはまた誰かを誘ってきてもいいな。
ご馳走さん。
ガラガラ♪
ふぅ、次郎、いい夜だったな。
だな。
またな。頑張れよ三郎。
お前もな。
二人は別れた。
次郎は歌舞伎町の中を新宿三丁目にむかって歩いた。
人生一度きりだぜ。
三郎の言葉を反芻する次郎。何故かその瞬間歌舞伎町の喧騒が遠のいた。
ふん、わかってるよ三郎。
次郎は一瞬立ち止まり、再び歩き始めた。
お兄さん、40分一本勝負、どう?
なにが40分で一本勝負だ。何分でも一本勝負だろうが、ど阿呆が。
しかし、
一本勝負…人生も一本勝負だな。
次郎は独りごちた。
次郎は歌舞伎町の狭い空を見上げた。
街の明るさで星は見えない。
目を凝らしたが、次郎の未来と同じように、まだ星は見えてこないのだった。
続く。
うな鐡@新宿歌舞伎町
鰻串の店。鰻屋は鰻重以外になかなか食べ物がない店が多い中、鰻の串を食べさせる貴重な店。リーズナブルな値段で注文しやすい。頼んだ鰻は全部うまい。串にも一工夫あり。接待も使用可能。
再訪必至。
3.8次郎