さてと、待ち合わせのバーは…あの辺だな。
しかしな…バーに行く前に、やはり腹ごしらえだ。バーにはほぼ何もないからな。
次郎は独りごちた。
西麻布は一人飯屋は簡単には見つからないな。皆デートか会食だ。
ふん、偉そーに。
西麻布の交差点を青山通り方面に曲がるとローソンが見えてきた。
この先、星条旗通りに五行とかいうラーメン居酒屋があったな…しかしあそこは味が落ちて久しいしな。
次郎が考えながら歩いてローソンまで来た。そこをさらに星条旗通り側に折れたところで、一軒の外観の汚いラーメン屋が見えてきた。
ん?なんだありゃ。青山墓地の入口に。
ラーメン屋か。客は皆幽霊か?あ?
次郎が件のラーメン屋に近づいていくと。意外にも客がたくさん入っていた。
…
えい、ものは試しだ、
ギイ♪
ハイ、イラッシャイ。
一人だ。
奥ドーゾ。
見ると小汚い浮浪者のようなオヤジが陣取る奥の席を案内された。
くそ、あんな臭そうなやつの前で飯が食えるかっ!
こりゃ出るか?
店員はにこやかにその浮浪者紛いと喋っている。
なんだ、ここは。別天地か!
仕方ない。
次郎はこの古狸の目の前に座るのを避けて斜めに座った。
さてと、幽霊ラーメンはどこだ?あ!?
メニューが壁に貼ってあった。
なんだ幽霊ラーメンがねぇじゃねぇか!
ええい、ラーメンだ!
それに焦がしネギをいれやがれ!
ハイよ♪
次郎の前に座る古狸を見ていると、やけに店員と馴れ馴れしい。更には他の客が帰ったとき、ありがとうございますと大きい声で叫んだ。
な、なんだ、まさか、、、
いらっしゃいませー(野太い声で)
ははははー(野太い声で)
まさか、店のオーナーなのか!
知らねーが、なんじゃそらー!
オ待タセシタシタ。
次郎が驚愕している間にラーメンが着弾した。
ほう。醤油スッキリ系か。
次郎はスープを啜った。
ほう。なかなかいいぞ。合格だ。
う、すごい焦がしネギだ。こりゃ臭くなるな!はは!
どれどれ麺は?
ほう。細麺だな。これも合格だ。
ズルズルズルッ!
いい腰だ。
なんだか食べるごとにクセになる味だ。なかなか良いぞ。
ズルズルッ!
ズズズー!
ズルズルッ!
ズズズー!
ズズズズズズー。
ふぅ、案外いけたな。
ご馳走さんと。
いくらだ?
850円デス。
意外とたけーな。
まぁいい、ここはキッチリ払わせてもらおうか。
次郎は100円玉8枚と10円玉5枚を古狸の前に叩きつけた。
ふん、それでシャンプーでも買いやがれ!
ギイ♪
ふー。
さてと、行くか♪
コートの襟を立てる次郎。
まるで東京カレンダーに出てくる外資系金融マン気取りで、西麻布界隈の怪しげなバーに向かうのだった。
お客さん、マフラー!(野太い声で)
うぉ!
次郎は恥ずかしい思いで振り返った。
続く。
かおたんラーメン@西麻布
西麻布を根城にしているやつらの間では有名なラーメン屋。これがまた意外とうまい。サイドメニューも割といける。
たまに確かめたくなる濃い味醤油ラーメン。
3.5次郎