久しぶりだな。
次郎は独りごちた。
次郎は故郷の函館に来ていた。
年末の函館はマイナス2度。雪に覆われていた。
今年は雪が多いようだな。空港では懐かしい函館弁が聞こえてくる。
朝の飛行機が早かったせいで何も食べていない次郎。
ホテルに行く前に、まずは腹ごしらえだな。
タクシーに乗り込む次郎。
おい、吉田商店まで頼む。
へ?それは…
スープカレーの吉田商店だバカ野郎。それぐらいわかれ。
は、はい。かしこまりました。
タクシーは雪道を滑り出した。
懐かしい景色が次郎の目を通り過ぎて行く。
あまり変わっていないようだ。
次郎が函館にいたのは10年前。吉田商店に毎日のように通っていた。次郎のスープカレーの原点だった。
はい、着きましたよ。
1930円です。
釣りはとっときな。
キッチリ1930円運転手に渡し店に入っていった。
ガラガラ♪
いらっしゃい。
一人だ。
学校の教室ような店内。
次郎は席に着くと、出席簿のようなメニューを開いた。
ここは角煮カレーに決まりだな。それに、餃子と納豆トッピングだ。
おい、ねーちゃん。
はい。
角煮カレー、餃子、納豆、焼きチーズトッピングだ。辛さは4だ。
はい。
ふん。ねーちゃんはロッカーか。金髪だな。
次郎は10年前を思い出しながら目を閉じた。
はい、お待たせしました。
ぬお!ついに来たか!
ビジュアルは変わってないな。
まずはスープか。
うーん、サラサラ系だな。うまい。変わらないうまさだ。味もしっかりついてて素材の旨さを引き出すな。
そして、納豆だ。これがまたスープの角を取りまろやかにする。飯が進むな。
いよいよ、角煮だ。
くー、味がタップリ染み込んで、適度な歯ごたえ。パーフェクトだ。
変わらぬ旨さだ。俺のスープカレーのオリジンはやはりこの店だな。
ゲフッ
ご馳走さんと。
おい、会計頼む。
はい。2250円です。
ほらよ。釣りでその髪をまた金髪に染めるがいい。
はい、ちょうど頂戴します。
ガラガラ♪
おおぅ、寒い。さすが函館。俺の街。
さてと、湯の川温泉にでも入るとするか。
次郎はひとりごちた。
路面電車に乗り、次郎は温泉街へ消えていった。
続く。
吉田商店@函館市内
サラサラ系スープカレー。素揚げの野菜がタップリでスパイスも効いている。チキンもポーク角煮もしっかり煮込まれスープとうまく絡み合う。揚げ餃子と納豆が最高にマッチ。函館のスープカレーのオリジン。病みつきになる味。
4.2次郎