意外にさみーな。
次郎はひとりごちた。
次郎は夜な夜な自転車をこぎラーメン屋を探していた。渋谷方面は行き飽きていた。神保町のオヤジの店も遠い。今夜は渋谷と反対に四谷方面に向かった。
赤坂のあたりは公の場所が多く、折しもトランプ大統領が来日する前とあって物々しい警戒体制が引かれていた。
ふん、税金の無駄遣いをしやがって。それなら坂のない道をもっとつくれってんだっ!
次郎は上りに坂をせっせとのぼっていった。四谷三丁目の交差点を過ぎたあたりでラーメン屋がいくつかでてきた。
四谷三丁目は、覆面の師匠である大オヤジがやっている店黒塗りの店構えのがんこがあった。
覆面もはじめは大おやじとオヤジの二人で開店し、大オヤジのラーメン屋がんこは、次郎が学生時代、早稲田の街で毎日通ったラーメン屋だった。
しかし、すでに昼までに閉店している。
次郎は曙橋にむかって自転車を走らせた。
途中小さい道に入ると一軒の小綺麗なラーメン屋をみつけた。
鯛塩そば灯花。
なんじゃそら。
ふん、つまり鯛出汁の塩ラーメンってことだな。こーいう店はアッサリしすぎてるのがデフォルトだからな。
まぁいい。ものは試しだ。
ガラガラ♪
らっしゃい。
一人だ。
次郎は普通の塩ラーメンの食券を買った。
こちらへ。
おうよ。
塩ラーメンだ。ユリオカでな。
ハイ、カシコマリマシタ。
小気味いいんだか悪いんだか。
店内は小綺麗で、柚子胡椒が置いてある。先客は2名。
まぁこんなもんかな。
次郎は目を閉じた。
チャッ、チャッ、
チャッ、チャッ、チャッ
はい。お待たせしました。
ほう、スッキリしたスープだな。しなちくは長いままか。チャーシューは鶏肉か?まぁいい。
ズズズッ
ほう。スープはやはりアッサリだが少し動物系だな。なかなかだ。
ズルズルズルッ
麺はコシがある。うまいじゃねーか。少しスープが物足りんな。
次郎は柚子胡椒をかけた。
おお、これはいいな。合う合う。
柚子胡椒で味が引き締まり、麺もスープも味が引き立ってきた。チャーシューもアッサリ目だがいけるな。
ズルズルズルズルッ
ズズズズー
ふー。
ごちそうさんと。
これで800円か。まぁこんなもんか。
もう少し野生的でもいいけどな。悪くはない。
またくるぜ。
ありがとうございましたーー!
ガラガラ♪
…風は寒いなやはり。
帰りは下り坂か。
ん?鍵がねぇな。
なんだささりっ放しじゃねーか。
日本はまだまだ平和だな。
このままいくとトランプにやられちまうなぁ。
次郎は独りごちた。
再び四谷三丁目から外苑に向かう次郎。
先ほどと同じ警官がつまらなそうに突っ立っていた。
ご苦労なこって。
そう呟いた声は夜空に吸い込まれていった。
続く。
鯛塩そば灯花@曙橋
四谷三丁目から北へしばらくすすんで左手の道を入ってしばらくいくとある塩ラーメンの店。他に味違いで二店舗あるらしい。スッキリ塩ラーメン。店内は小綺麗。味はすこし薄めだが中々。女性は入りやすいかも。
3.3次郎