…というわけで、常に危険を予測した運転をこ心がけ…$#•£€&¥@!<%#...
ふー、なんでこんなつまらねー講義を受けなくちゃならねーんだっ、あぁ?教えてくれよ!お天道様よぉ。
次郎は自動車教習所で指定のつまらない講習を受けていた。
朝から4時間、午後は3時間。なんだこのカリキュラムは。長すぎるだろっ!あぁ?教えてくれよ!お天道様よぉ。
俺様の時間をなんだと思ってやがる…
絶望の4時間が過ぎ、時刻は11時45分。
ふー、やっと前半戦が終わったな。
午後まで2時間。長い休憩だ。
しかし、目黒ならば…この機会を最大限利用させてもらうぜ。
次郎は、うだつのあがらない白髪の教官に一瞥をくれて教習所のビルを出た。
恵比寿駅から目黒駅方面に道を登っていくと、目黒駅周辺に食堂街が見えてくる。12時にはどっと疲れきったサラリーメンズたち、通称"オワリーメン"が街を蹂躙する。
次郎はその少し前の11時50分、講義の合間に調べておいたあるとんかつ屋に向かっていた。
10月も半ばだというのに陽射しはまだ夏の気配を漂わせている。
くそっ、意外に歩くな。暑いぜ。
しかし、こうやって苦難を乗り越えてこそ、うまいとんかつにありつけるってもんだ。
目黒駅直前の交差点のビルの地下一階にその店はあった。
!
しかし、すでに列が出来ている。
く、12時前だというのに。
まぁいい、期待も膨らむってもんだ。
ランチメニューは3つ。
ヒレ、ロース、カツカレー。
お客様、何名様?メニューは?
独りだ。ロース。
即決だった。
とんかつ屋の実力はロースに現れる。
カウンターは所狭し。満席だった。奥のテーブルに相席させられた。
カウンターにキャベツが多数鎮座している。夜は一品料理もあるらしい。
この雰囲気、名店の匂いがするぞ!ははっ!
次郎は独りごちた。
はい、おまちどぅ♪
ぬおぉ!でかい!1100円でこのでかさか!
どれどれ、
中もいい感じのピンクだ。
ぶ、分厚い!!
これはきたぞ!次郎とんかつ五選にランクインか!?
どぼどぼっ
次郎はたっぷりととんかつソースをかけて、更にたっぷりと洋がらしを塗りたくり、一気に頬張った。
ぐしゃっ!
ぐぉ!
サクサクだっ!しかし肉はしっとり柔らかく、そして歯切れもいい!
うまい!
おやじ!
うまいぞ!!
次郎のテンションは上がった。
続く二切れ目は醤油を垂らしおもむろにに頬張った。
ぐぉ!
醤油のさっぱりとした味がロースの脂と溶けあって絶妙なハーモニーを奏でる。
うごぐぁ…
こりゃたまらん。
次郎は迷わずライスを掻き込んだ。
…
はぁはぁ、
これは戦いだ。しかし幸せな戦いだ。
どぼどぼっ
むしゃむしゃっ
ササッ
むしゃむしゃっ
サクっ!
むしゃむしゃっ
ズルズルっ。
ゲフッ。
ふー。
白飯も味噌汁も一気に駆け抜けた次郎。
1984年のロス五輪でカールルイスが100メートルトラックを当時の彼の自己ベストで駆け抜けたように、まるで体の全身がかもしかになったような気分にさせられる見事な全力疾走だった。
だ、だめだこりゃ。
午後は寝るな。
とりあえず瞼に目玉でも書いとくか。
なんてなっ!はは!
ますますテンションが上がる次郎。
午後はつまらない講義という格好の睡眠導入剤を投与された上、うだつのあがらない白髪の教官の眠狂四郎の魔剣をお見舞いされるわけだ。
ふんっ、望むところよ!
そう言いながら、すでにあくびをする次郎。
おい、おやじ、釣りはいらねーよ!
テーブルにきっちり1100円を叩きつけ、暖簾をくぐる次郎。
地下から地上に出ると、照りつける太陽がますます次郎の睡魔を呼び覚ます。
眠狂四郎が一心に剣の刃を磨いていることも知らずに、次郎はふらふらと元のビルに吸い込まれていくのだった。
続く。
かつ壱@目黒
食べログ100選に選ばれたとんかつ屋らしい。
衣さくさく、中はしっとり、脂ぎっしり、ボリューム最強。これで1100円という超高コスパ。
オワリーメンたちのオアシス。目黒に来たら一度はおいで。
3.7次郎