それはグロテスクなまでに暗闇の中だった。
山縣来栖はその闇の中にぽつんと佇む一軒の洋館を見つけた。
ふーむ、これから殺人が起こりそうな気配だ。
パタリ。次郎は本を閉じると、腕時計に目をやった。
むぅ、12:45か…そろそろ昼飯でも食うかな。次郎は喫茶店の席を立ち上がった。
今日は神保町に本を探し求めていた次郎。昼は神保町で取ることに決めていた。しかし、いつものオヤジのラーメンは今日はやめておきたいところ、目の前に鴻というレトロな看板が目に入った。
よく見るとスープカレーを出す店あの鴻らしい。
ほぅ、こんなところに鴻か。よし、決めた。今日はここだな。
カランコロン♪
いらっしゃいませー。
む、暗い。そして間口が狭い。
なんと靴をぬぐのか。
ま、まぁいい。
中にもう一枚扉があった。
ガラガラ♪
む、更に暗い。
まるでグロテスクなまでの暗闇だった。
なんだここは、飲み屋か。
どうやら夜は飲み屋のようだった。
メニューを見る次郎。
だいたい千円前後か。
ん?カウンターに置いてある特別メニューに目がいった。
豚しゃぶカレーか。いいな。サラッといけそうた。よし、おい、おやじ、豚しゃぶカレーの黒で頼む。それとラッシーもな。
はい、かしこまりました。
店内のカウンターは狭く五人入るとぎゅうぎゅうだった。二階にも席がありそうだった。
さてと、何が出てくることやら。
はい、お待たせしました。
ほう、早いな意外に。
小さなお盆にのって件のカレーが提供された。
ほう。さすがに黒いな。グロテスクなまでに…とまではいかないがな。
さてと、お手並み拝見だな。
次郎はスープを啜った。
ほう、濃厚だ。味もしっかりついている。
スープが野菜に絡みつき、それでいてシャキシャキだな。
豚肉はどうか…
ほう、あっさりして、スープとうまく絡むな。ま、しかし想定通りだな。
だが、悪くない。
むしゃむしゃっ
ズズズッ
むしゃむしゃっ
ズズズッ
ズズズズズズズー
ふー、腹一杯になるな。次はハンバーグも試したいところだ。
なんだか味のある店だな。おい、おやじ、会計だ。
はい。1200円です。
はいよ。
まいど。
カランコロン♪
狭い土間で靴を履く次郎。
おおぅと、押すなバカヤローがっ。
後ろのオワリーマンに怒声をかまし、店を出た次郎。
曇天の空は、太陽を隠してはいるものの、まだまだ残暑がきつい。
ふー、夏はまだまだ続きそうだな。
次郎は独りごちた。
恨めしそうに空を見上げ、次郎は再び神保町の街を歩き出した。
続く。
鴻@神保町
夜は飲み屋か。昼はスープカレーの店。どちらかというとカレー寄り。黒と赤の2種類のスープ。食べやすいスープカレー。味は濃い目。これといって特徴がないが、とはいえ味はなかなか。ハンバーグが正解か。
3.5次郎