函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

天ぷら 高七

あ、暑い…

次郎は独りごちた。

突然降り出した夕立ちは次郎を区営プールに繋ぎ止め、ようやく雷雨が止んだところで次郎は屋外へと駆け出したのだった。

 

蒸し暑い…

雨で少しは涼しくなるかとおもったのに、むしろ蒸し暑さが増しちまったな。

 

プールで一汗かいた体からは早くも汗の玉が浮き出始めていた。

 

夏である。

7月も半ばを迎え本格的な夏が東京に訪れていた。

 

次郎は自転車に乗り家路についた。シャワーを浴びて一息つくと、その頃には蒸し暑さも幾分和らいだようだった。

 

さてと、今夜は何を食うか…

夏。ハモ。鰻。どうもそっち側の気分だな。次郎は携帯をいじり、晩餐を模索した。

 

天ぷらってのもあるな。鰻、、、穴子

そうだ、穴子だ。

しかし、天ぷらは下町だよな…遠いな。近くにないのか。

 

ほう、高七か。若松河田…知らない駅だな。早稲田に近いのか。時間も早いしな、よし今夜はそこで天ぷらを食おう。

 

次郎は着替えをすませ、暑さの和らいだ街に出ていった。

 

しかし行きずらい駅だな。まぁいい。

次郎は二度電車を乗り換え件の若松河田に降りた。

 

なんだか下町情緒のある街だ。

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ほう、夏目坂か。

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夏目漱石ってことか??

そりゃ天ぷらもうまそうだ。

 

そうこうしているうちにお目当の店があった。

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 ガラガラ♪

戸を開けて入ると店に先客はなく、次郎が今夜の初客であるようだった。

 

いらっしゃいませ。夫婦の妻が応じた。

一人だ。予約は無い。

 

…じゃカウンターにどうぞ。

 

次郎は席に着くとメニューを開いた。開いたが、目の前にある金魚鉢に目が奪われた。

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うぉう、生きてるじゃねーか!

きっとこの沢蟹を食うことになるのだろう。しかし、不思議と嫌な感じはしなかった。

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さてと、まずはビールだ。そして、かき揚げ付き天ぷら定食。そして穴子だ!

 

かねてより食べたかった穴子もいってしまった。それとなくお腹に手をやる次郎。ダイエットとうまい飯、二律背反するジレンマが次郎を絡め取った。

 

ええぃ、気にするな!まだ時間は早い。

 

 

はい、まずはお通しとビールね!

突如沈黙は破られた。

板前の旦那からビールと味噌で煮込んだ枝豆、そして塩辛が出された。

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プハー!うめー!

ハートランドが胃に清涼を与えた。

そして、この枝豆、甘くてうまいな。やるなおやじ!

天ぷらへの期待が高まった。

 

 

はいよ、天ぷらね。

一口目は何もつけずにいってね。

沢蟹、大根、オクラ、エビ、サツマイモ、キス、タチウオね。

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盛りだくさんだった。そしてやはり沢蟹が一番前に鎮座していた。

 

次郎は金魚鉢を凝視しながら、沢蟹を頬張った。

パリッ、パリパリッ!

 

ほぅ!うまいなこれは!

あっという間に平らげた。

次にオクラ、大根、キスと攻めていく。

どれもサクサクで熱々だった。衣が薄く、ベタつかない。どれも美味かった。

 

これはまずいぞ!

嬉しい笑みが溢れる次郎。

 

はい、穴子ね!

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うぉ、でかい!!

食べ応えがありそうだ。

次郎はおもむろに一口目を頬張った。

ザクッ!

おぉ!サクサクで、そして中はふわふわだ!!

うめぇーー!

おやじやるな!これを待ってたんだ!

 

生醤油も合うんで食べてみて!

そう言われて次郎は醤油を付けて穴子を食べた。

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ほう!なんと!うまい!

醤油が合うなんてな!嬉しい発見だ!

 

 

ありがとね!最後はかき揚げ丼だからね。

おやじのテンションも上がった。

 

はいよ。

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おお!セリが美しい!かき揚げの上にエビとホタテと散らされている。なんと贅沢な!

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うまそうやー!

次郎はかき揚げとご飯をかきこんだ。

ザク、ザク、サク、サクサク!

くー、うめー!!なんじゃこりゃー!!

わざわざ若松河田まで来てよかったー!

 

気がつけば店にも新たな客が入り始めていた。

 

これは再訪必至だ。いい店をみつけたぜ。

 

げふっ。

次郎は完食した。

こりゃ痩せれるわけねーな。

次郎は独りごちた。

 

さてと…おやじ、会計頼む。

 

はいよ。4000円です。

 

こんだけ食べて4000円か!

くー!おやじ!また来るぜ!

 

あいよ。お待ちしてるよ。

いい笑顔だった。

 

ガラガラ♪

店を出るとまだ明るく夕日が空を赤く染めていた。

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しかし、この町は風情があるな。なんだか明治にタイムスリップしたようだ。

ふと見ると再び道案内の碑があった。

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ほう、やはり夏目坂は漱石のゆかりだったか。猫の絵まで。我輩は猫である、か。
夏目友人帳にもにゃんこ先生が出て来るもんなぁ。なんだか妖怪が出て来そうな坂だぜ。

夏目坂はそのまま進むと早稲田に通じていた。

早稲田に出たら俺も学生になってたりしてな。

次郎はそんな空想をしながら、夕焼けを見上げ、再び歩き出した。

 

 

遠くから猫の鳴き声が聴こえた気がした。

 

 

続く。

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天ぷら 高七@若松河田

リーズナブルな天ぷら屋。しかし、味はピカイチ。ボリュームもあり、料理に一工夫が必ずある。沢蟹も穴子もうまい。再訪必至。

3.9次郎