食い倒れ 函館次郎のひとり飯道

函館次郎が世間の荒波に抗いながらひとり飯に命を捧げる物語

甲賀 蕎麦屋

次郎は西麻布を歩いていた。

時雨のような雨が降る夜だった。

仕事が立て込んで疲れとストレスが溜まっていたため、なんだか優しい料理が食べたかった。

 

ふと見ると、西麻布の交差点にほど近い小道に、一瞬店があるときづかない店があった。

 

他の誰かがそこの建物に入っていくのを見て、その入り口に近づくと、そば 甲賀とあった。

 

柔らかい光が店内から漏れていた。店内の優しさと蕎麦という料理の優しさが次郎の心をかきたてた。

 

気づくと次郎は引き戸を開けていた。

 

ガラガラ♪

 

いらっしゃい。ご予約は?

お上が怪訝そうな顔で覗く。

 

予約していないのだが。一人だ。

 

お上は少し逡巡したあと

 

奥のカウンターへどうぞ。

 

次郎は恐る恐る店に入った。

 

満席ではないが、静かな店だった。このあと予約が入るのだろうか。訝しげに先に座した。

 

カウンターは竹で暖簾がかかっており、その隙間からうっすら料理人が見える。

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メニューはシンプルだった。

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次郎は少し考えて、海老天そば、そして鮪の山かけを頼んだ。

 

待つこと10分。

 

はいお待ちどお様。

 

突如沈黙は破られた。

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ほう、うまそうだな。海老天があつあつだ。

 

さてと、ズルズル。

 

む、腰もある。上品な味だ。出汁も優しい味だ。今日の俺を優しく包んでくれるな。

ホッとするぜ。

 

 

そして、この山かけだ。アッサリしてうまそうだ。俺の胃も休まるが、しかし満足できる。

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これはいい店を見つけた。

 

 

ズルズル、ズズズ、ズルズル、ズズズ♪

 

隣の客の蕎麦をすする音が耳に心地いい。

 

次郎も自分の蕎麦をすすった。

 

ズズズズズ、ズルズル、ズズズズズ…

 

 

ズルズル、ズズズズズ、ズルズル…

 

 

ふー。

ごちそうさん

 

癒されたぜ。

 

おい、お勘定を頼む。

 

2700円です。

 

まぁ西麻布価格だな。

 

また来るぜ。

 

ガラガラ♪

次郎は颯爽と店を出た。

 

まだ時雨が夜の西麻布を包んでいた。

今はなんだかこの雨ですら優しく包んでくれているように次郎は感じた。

 

 

今夜はウィスキーがうまそうな夜だな。

次郎は独りごちた。

 

西麻布の喧騒は一時止んで静かな夜は更けていった。

 

続く。

 

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おそばの甲賀@西麻布

渋い隠れ家的な店構え。品のある店と味。

たまに寄りたくなる家のような存在。ボリュームがないため価格は割高か。

 

3.3次郎