食い倒れ 函館次郎のひとり飯道

函館次郎が世間の荒波に抗いながらひとり飯に命を捧げる物語

大黒屋 天丼

う、うぅ、蒸し暑い。

 

東京は雨の直前によくあるように蒸していた。

次郎は浅草駅構内を歩いていた。

地下は湿気がこもり、週末の人出でごった返し、構内はうっとおしいほどに蒸していた。

 

うぅ、出口はどこだ…

 

ドンッ

 

うぉ、

後ろから外国人の団体客が押し合いへし合いで通り過ぎる。

 

くそっ、なんだってこんなに混んでやがるんだ!浅草は。

 

次郎は久しぶりに休日の仕事が入っていた。

くそ、あのクソジジイ。偉そうに資料を持って来いだと。何様だっ!

 

次郎は、ある大学教授に資料を届けることになっていた。

 

ちっ、しかし、もう1時か。いい時間だ。約束の時間まで1時間もあるしな。昼でも食うか。

 

さてと、浅草といえば…

うなぎ、天ぷら、麦とろ、蕎麦…なんでもござれだ。

 

しかし、駅構内と同じく街も混んでいた。

 

ちっ、雷門から離れよう。そういえば、濃い味の天丼の店があったはずだ。

次郎は浅草寺の裏道を抜けた。

 

おぉ、あった!

大黒屋。浅草の天丼で有名な店だった。

 

くっ、ひどい列だ。

優に20人は並んでいた。

 

なんだこりゃ!週末は鬼門だな。

ん?

ふと、見ると大黒屋本店の裏に別館があり、列はなかった。

 

おぉ!なんだ、別館があるじゃねーか!ははっ!あいつらはど素人だな。かっかっかっ。

次郎は喜び勇んで別館の戸を開けた。

 

ガラガラ♪

 

はい。何名様ですか?

 

一人だ。

 

どうぞ。

 

おぉ。ついてるな。

次郎は席に通された。

さてと、、、

 

えい。よくわからんが、天丼セット頼む!

 

はいよ。

 

横を見るとペルシャ系の外国人が悪戦苦闘していた。

 

ふん、日本食をなめるなよ。

次郎は独りごち、目を閉じた。

 

 

 

はい、お待ちどうさま。

突如沈黙は破られた。

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おお、うまそうだな。タレがたっぷりで衣がしんなりしてるな。

 

ガブッ

 

おお、べっとりしてるかと思ったが、そんなことないな!

揚げたてなためべっとりタレがかけてあっても中身はしなびておらず、絶妙だった。

ほぅ。これはいけるな。

キス、海老、かき揚げ、野菜とボリュームもすごかった。

 

満足だ。まぁいい値段だしな。

 

おばちゃん、会計だ!

 

出口になります。

 

ちっ。わかったよ。

次郎は席を立った。

隣ではまだペルシャ系が天丼に悪戦苦闘していた。

 

ふん、日本の悠久に慣れることだな。

次郎は独りごちた。

 

ガラガラ♪

 

うっとおしい雲は薄くなり、雲間から力強い初夏の陽が射していた。

 

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大黒屋@浅草

濃い味のタレがたっぷりかけてある天丼。一品と澄まし汁がついて2100円。値段は浅草価格だがうまい。

3.4次郎