あ、暑いな…
まだ四月だというのに。
次郎は住民票を取るため区役所向かったが、支所が三田線沿いにあることが判明し、三田ならばと神保町に途中下車した。
むしろ、遠回りだな。まぁいいか。今日はオヤジの妹のバースデー。いつもと違うラーメンが味わえるなら行かない手はないな。
次郎はひとりごちた。
くくくっ、白えびに鯛か。うまそうだ。
店の前につくと、既に人が並んでいた。
おぉ!さすが常連は耳が速いな。
次郎は大人しく列に並び、目を閉じた。
お客さん、どうぞ。
突如沈黙は破られた。
おぉ、弟子の兄ちゃんか。千円だな。ほらよ。持ってけドロボー!
次郎は店内に入りカウンターに座した。よし、オヤジ、大盛りで頼む!
ハイよっ。
小気味のいい会話に麺の湯切り音が続く♪
次郎は再び目を閉じた。
チャッチャッ
チャッチャッ
チャッチャッチャッチャッ
はいよ。お待ち。
再び沈黙は破られた。
そういえば、トッピングを言い忘れていたがいつも通り、味玉に海苔、青唐辛子が入っていた。
さ、さすがだオヤジ!
しかし、この豚しゃぶがまたうまそうだぜ。
まずはスープからだな。
いつも通りスッキリとした透明なスープだった。
む、えびだけでなく鯛の味までしっかりついてるな。えびで鯛を釣るってかっ!!
ハハッ、やるなオヤジ!
そして、豚しゃぶだ。
くー、うまいな。豚しゃぶも単なる肉ではなく、ちゃんと出汁の効いた味が予めついている。これはうまいはずだ。
ズルズルッ
ズズー
ズルズルッ
ズズズー
ズルズルズルッ
ズズー
ズズズズズー
ふぅ。ごちそうさんと。
い、いかん、またスープを飲み干しちまった。
毎度♪
器を下げるオヤジの嬉しそうな顔を見て諦めがついた。
オヤジ、今日もうまかったぜ。妹さんと良い誕生日をな!
そう言い捨てて、次郎は店を出た。
ふぅ、俺もそろそろバースデーなんだけどな…
ボソリと呟く次郎。
その言葉はすぐに都会の喧騒にかき消された。
続く。
覆面智@神保町
いうもながら味の変わるラーメン屋。今回は白えびに鯛と贅沢な出汁。いつも通りのハイクオリティ。完敗です。
3.8次郎