函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

覆面智⑥ 牛テール塩ラーメン

終わった…

 

ふと時計を見ると午後5時。定時だった。

ふー、俺の生産性もみるみるうちに上がってるぜ。

 

定時♪ 定時♪ 銭形定時♪

ってんだコンチックショー♪

次郎は自席で独りごちた。

 

さっさっと職場からオサラバだ。

次郎は職場から出ると六本木駅に向かった。

 

ふー、まだ5時か。

定時に終わると1日は長いな。これはいい。

さてと、定時に終わった次郎さんは何を食うかだな。

 

定時、定時、、、

歩きながら思いを巡らせる次郎。

定時、定時、、、、、、

 

定時、テイジ、テージ、テージ…

 

テール!?

 

まさか。

いやまさかな。

 

次郎はスマホをいじった。

 

な、なんてことだ、、、

今日は金曜日だった。

 

金曜日は牛テールスープの日じゃねーか!

 

 

 

次郎は日比谷線を日比谷で乗り換え、三田線に乗っていた。

 

来ちまった…

 

100の後悔より一杯の幸せ。

…負けだよ。

 

ガラガラ♪

 

らっしゃい!

 

お、オヤジ!

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はいなかった。代わりに弟子がいた。

次郎は牛テールスープのボタンを押した。

 

煮卵、青唐辛子、それとモヤシを頼むぜ。

強気だった。

 

次郎は、麺の湯切り音を聴きながら目を閉じた。

 

はいよ。お待ち!

突如沈黙は破られた。

と、同時に右耳の至近距離、通称次郎ゾーンに人の気配を感じた。

 

 

お、オヤジっ!!

目を開けるとオヤジが次郎を見ながらニヤついていた。

 

珍しいね。夜にご登場かい?

 

あ、いや、仕事が、その、早く終わって…

接近戦は苦手な次郎だった。

 

い、いただきます!

次郎はいたたまれず、ラーメンを食べ始めた。

ズズッ、ズズッ

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牛テールは塩味だった。獰猛なスープが透明な色に隠されていた。テールの濃厚な味わいが口に広がった。

 

いつもの醤油とは違うな。また別のうまさだ。とても濃厚だ。

 

そして、この牛テールだ。

どれどれ。

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な、なんと!

柔らかく、そして獰猛だった。口の中に入れると牛テール独特の味とほろほろ具合が舌を楽しませた。

 

う、うまいなこれ。

お、オヤジ!

 

ズルズルッ、ズズズッ

ズズズッ、ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズッ

 

ぐおー、チャーシューもいつも通りうまい!牛と豚のコラボだ!モヤシもシャキシャキだー!

 

銭形定時の甲斐があったぜ、ハチっ!

次郎は独りごちた。

 

ズルズルッ、ズズズッ
ズズズッ、ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズッ…

 

ゲフッ。

 

ふー、また全部たべちまった…ダイエットはどこえやらだな、ハチッ。

 

ごちそうさんと。また来るぜオヤジっ!

とその弟子よ!

 

ガラガラ♪

 

ふー。まだ5時半か。神保町もラーメン屋が増えたな。神保町の駅前にはラーメン屋の看板がたくさんできていた。

 

一杯の幸せは、いつしか100の幸せに変わるのかもな。

 

そんなことを思いながら次郎は夜空を見上げた。

 

雨上がりの空には、幾つかの星が瞬き始めたばかりだった。

 

まだまだ冷えるな。

次郎は神保町の地下鉄の構内に消えていった。

 

続く。

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覆面 智@神保町

金曜日は牛テール塩ラーメン。通常の覆面に比べるとすこしコッテリ。牛テールが強いインパクトを与え、塩ラーメンであることを忘れてしまう。うまし。

3.8次郎