終わった…
ふと時計を見ると午後5時。定時だった。
ふー、俺の生産性もみるみるうちに上がってるぜ。
定時♪ 定時♪ 銭形定時♪
ってんだコンチックショー♪
次郎は自席で独りごちた。
さっさっと職場からオサラバだ。
次郎は職場から出ると六本木駅に向かった。
ふー、まだ5時か。
定時に終わると1日は長いな。これはいい。
さてと、定時に終わった次郎さんは何を食うかだな。
定時、定時、、、
歩きながら思いを巡らせる次郎。
定時、定時、、、、、、
定時、テイジ、テージ、テージ…
テール!?
まさか。
いやまさかな。
次郎はスマホをいじった。
な、なんてことだ、、、
今日は金曜日だった。
金曜日は牛テールスープの日じゃねーか!
来ちまった…
100の後悔より一杯の幸せ。
…負けだよ。
ガラガラ♪
らっしゃい!
お、オヤジ!
はいなかった。代わりに弟子がいた。
次郎は牛テールスープのボタンを押した。
煮卵、青唐辛子、それとモヤシを頼むぜ。
強気だった。
次郎は、麺の湯切り音を聴きながら目を閉じた。
はいよ。お待ち!
突如沈黙は破られた。
と、同時に右耳の至近距離、通称次郎ゾーンに人の気配を感じた。
お、オヤジっ!!
目を開けるとオヤジが次郎を見ながらニヤついていた。
珍しいね。夜にご登場かい?
あ、いや、仕事が、その、早く終わって…
接近戦は苦手な次郎だった。
い、いただきます!
次郎はいたたまれず、ラーメンを食べ始めた。
ズズッ、ズズッ
牛テールは塩味だった。獰猛なスープが透明な色に隠されていた。テールの濃厚な味わいが口に広がった。
いつもの醤油とは違うな。また別のうまさだ。とても濃厚だ。
そして、この牛テールだ。
どれどれ。
な、なんと!
柔らかく、そして獰猛だった。口の中に入れると牛テール独特の味とほろほろ具合が舌を楽しませた。
う、うまいなこれ。
お、オヤジ!
ズルズルッ、ズズズッ
ズズズッ、ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズッ
ぐおー、チャーシューもいつも通りうまい!牛と豚のコラボだ!モヤシもシャキシャキだー!
銭形定時の甲斐があったぜ、ハチっ!
次郎は独りごちた。
ズルズルッ、ズズズッ
ズズズッ、ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズッ…
ゲフッ。
ふー、また全部たべちまった…ダイエットはどこえやらだな、ハチッ。
ごちそうさんと。また来るぜオヤジっ!
とその弟子よ!
ガラガラ♪
ふー。まだ5時半か。神保町もラーメン屋が増えたな。神保町の駅前にはラーメン屋の看板がたくさんできていた。
一杯の幸せは、いつしか100の幸せに変わるのかもな。
そんなことを思いながら次郎は夜空を見上げた。
雨上がりの空には、幾つかの星が瞬き始めたばかりだった。
まだまだ冷えるな。
次郎は神保町の地下鉄の構内に消えていった。
続く。
覆面 智@神保町
金曜日は牛テール塩ラーメン。通常の覆面に比べるとすこしコッテリ。牛テールが強いインパクトを与え、塩ラーメンであることを忘れてしまう。うまし。
3.8次郎