煮干し、、、
結局来ちまった。
次郎は過日俺のハンバーグでハンバーグをしこたま食べた後、ふと店先から見えた大量の煮干しで出汁をとる煮干しラーメン屋が目に留まった。
しかし、さすがにハンバーグ即ラーメンは、流浪人剣心で言うところの悪即斬の斎藤一であり、潔い態度に惹かれていたものの、諦めた経緯があった。
とはいえ、それ以後の日日、ジワリジワリとたまっていったモヤモヤは消えず、ついに渋谷に足を向けてしまっていた。
俺のラーメン好きにも困ったもんだぜ。そう言いながらも次郎はニヤニヤしていた。
さてと、お、ここだここだ、渋谷駅のヒカエリエ側のロータリーを歩道橋で横切り、少し六本木側に歩いた右手にその店は凪はあった。
なにが凪いでるんだかな。俺の心は常に荒波だぜっ!
ひとりごちた次郎に北風がふきすさび、次郎は目を細めた。
くっ、さぶっ。
この寒さがラーメンを、よりうまく感じさせるんだ。よし、外に食券機か。このさぶいのに。
く、なかなか千円札が入らない次郎。ヒラヒラと千円札が落ちていく。
おぉう、キャッチ!さすが次郎様よ。苦あれば楽ありだ!今日もいいことありそうだぜ。
一人相撲を演じた次郎は店に入店した。
ガラガラ♪
らっしゃい!
ん、すこし狭目だな、く、どけこのアニメオタクっ!次郎は前に座る暗そうな大学生を押しのけ奥のカウンターに座した。
ふむ、なんだかいろいろ書いてあるな。
よく分からんが、単なるラーメンだし、ここはとりあえず全てオススメだ兄ちゃん。ユリオカでなっ!
はいよ。
お、ユリオカがわかるのかやるな若いくせに。
ふとカウンターの上の調味料を見る次郎。
なな、なんだこりゃ…ここまで煮干しかよっ!
大きめの声をあげてしまった次郎。周りから見られ多少気まずい思いをした。
く、なんだ見てんじゃねーよオタクども!冥界へ去れっ!次郎は聞こえないようにひとりごちた。
はい、お待たせしました。
突如沈黙は破られた。
おお、来たな。濃い味が予想できるな。なんたかワンタンみたいなもんも入ってるな。ん、そうかこれが平べったいナンチャラだな。
まぁいい、とにかく食べるぞ。
ズズー、
次郎はスープを飲んだ。
う、煮干しだ。これは凄いな。煮干しの味しかしねー。濃いめの醤油に合うな。麺はどうだ。
ズルズルッ、
ほう、麺は中麺だな。スープによく絡まってるな。いけるなこれは。
なんだかクセになる味だ。しかし煮干しがすごいな。調味料の煮干しも見つめてくるぜ。
ズズズッ、ふー。
完食した次郎。
うまかった。たまにはこんな味もいい。なんかクセになるしな。
横を見るとまだオタクはフーフー言いながら麺を啜っていた。
まだ食ってるのか、そんなんじゃ社会の荒波に勝てねーぞっ!ま、だから凪に来てるのか、合点承知の介だ。冴えてなるな、俺。
ひとりごちた。
アニメオタク兄ちゃんを押しのけ、次郎は店を出た。
ふー、体が煮干し臭くなったような気がするが、気のせいだな。
あばよ、凪。俺は再び荒な、、、
ビューッ
再び北風が次郎を吹き抜けた。
っ、さぶっ!
キツイぜ今年の冬は。
次郎は渋谷のネオンに消えていった。
続く。
煮干しラーメン凪@渋谷
すごい煮干し。味濃いめ。くせになる味でなかなかいける。
3.4次郎。