野菜不足か。
最近の野菜は高いようだな。ねぎしはサラダを止めてるし、ますます不健康になっちまうな。次郎は青い秋の空を見上げた。
空はこんなにいい感じなのに、俺の健康はイマイチか。ふんっ、嘆いたって始まらねぇ。人生万事塞翁が馬だ。
タンタンタンタン、歩道橋を背後から追い抜いていく足音をふと見上げると、女子高生が軽やかにステップをふんで駆け上がっていく。
若いな。
なんだか哀しい気分になる次郎。
よし、俺もやるか。
タンタンタンタンタンタン♪
はぁはぁ、次郎の息はすぐに切れた。
くそ、鈍っちまってるぜ。
そのまま歩道橋を渡り、降りる目にふとある店が飛びこんだ。
おぉ、そういうことかい嬢ちゃん。わかったよ。今夜は大人しくそこに入るとしよう。
タンタンタンタンタンタンタンタン♪
下りは軽やかにステップを踏む次郎。
そのまま店に突入した。
いらっしゃい。
次郎はカウンターに腰掛けた。
おやじ、パイコータンタン麺一つ。カリオカでな!
あ、間違えた。習慣とは恐ろしいぜ。
次郎はひとりごちた。
店内はまだ時間も早いせいかまばらだった。チャンスだな。
次郎は、水をゴクゴク飲んで、息を整えた。
はい、ぱいくーたんたん。
おぉ、変わってないな。これよこれ。
うまそーだ。
とれどれ、おぉ、このスープがたまらんな。
辛そうだが、実際はちょうどいい加減のピリ辛。麺は柔らかめ。そして、この排骨パイコーがスープとからまってなんとも言えない味だ。あぁうまい。チンゲンサイも合うんだよなぁ。
ここの排骨担々麺は日本一だ。
次郎は熱いものがこみ上げた。野菜はあとでスムージーでも飲むとしよう。
はー、食ったな。腹一杯だ。
よし、会計だ。
冬だと言うのに若干汗をかく次郎。ふー、まだまだ俺の新陳代謝は鈍ってないぜ。
タンタンタンタン♪
次郎の背後から再び高校生が階段を駆け上がっていった。
すっかり暮れた夜空に秋の星が輝いていた。
続く。
亜須加@渋谷
ここの担々麺は東京一だ。スープの味もパイコーも、バランスがいい。ボリュームもある。
3.8次郎