しかし、今夜は思い浮かばんなぁ。
次郎は、仕事帰り、六本木の街をふらつき、良い店が見つからず、西麻布までたどり着いたものの、なんとなく西麻布の店は行き過ぎている感覚に追われ、気がつけば渋谷まで来てしまっていた。
いやー、こんだけ歩いたんだから、なにを食べても文句は言われねーだろう!
そう自分に言い訳して渋谷の街を徘徊する次郎。
東京トンテキ、、、味が濃すぎるんだよなぁ。洋食屋富士屋、、、行ったばかりだしなぁ。
担々麺あすか、、、もう閉店かぁ。
ベトナムホイさん、、、ラストオーダーかぁ。
くそ、意外とないなぁ、、、
このまま行くと八王子まで歩いちまいそうだ。痩せるなぁ次郎さんよぉ。
ブツブツと呟く次郎。すれ違うサラリーマンが次郎に一瞥をくれる。
けっ、このオタリーマンどもが、見てんじゃねーよっ!はげリーマンのくせにっ!
次郎は毒づいた。
仕方ない、神泉までいくかなぁ、、、
ふと気づくと、人入りの良い店があった。
見上げた看板に俺のハンバーグとあった。
んー、俺のシリーズか、どうすっかなぁ。
と言いながらも、既に次郎の口はハンバーグの肉汁で満たされていた。
仕方ねーな、
カランコロン♪
はい。いらっしゃい。
カウンターに座る次郎。
メニューを開けると各種のハンバーグ料理が写真付きであった。
ぐー。
次郎の腹が鳴った。
ククッ、戦もできねぇな。よし、ここはデミグラスソースハンバーグだ。チーズと目玉焼きトッピングだ。飯は大も、、、いや、ここは普通で。
先生の顔が浮かんだ。
ふー。俺もしけちまったぜ。よし。以上だ。
カリオカですね?
ちげーよ、ユリオカだよ!間違えるなそこ!
と思ったが既に店員はおらず、次郎は目をパチクリさせた。
ふー、疲れてるのか、、、まぁいい。
はい。サービスの野菜ジュースです。
おぉ、これはいいな。先生も喜ぶだろう。次郎は一息に飲み干した。
いけるな。よし、しばらく瞑想だ。
はい、お待たせしました。
突如沈黙は破られた。
おぉ、すごいボリュームだな。やはり目玉焼きは間違ってなかったぜ。そそられるな。
次郎は、箸でハンバーグを割った。
に、肉汁が、、うまそうだ、、、
次郎は口にパテを放り込んだ。
おお、うまい。そして、上品だな。女性ウケも良さそうだ。俺は、女性誌記者かってんだ、ははっ、おい、コーラ頼む!カリオカでな!
テンションは知らずのうちに上がっていた。
卵を崩したあとのミクスチャーがたまらんな。オタリーマンどもめ、見たか!
見てねーか。
次郎はひとりごちた。
ふー、腹一杯だ。
ありがとよ、満足したぜ。
また来るぜっ、ユリオカでなっ!クククッ。決まったな。
カランコロン♪
次郎は颯爽と店をでた。
いやー歩いた甲斐があったな。
お?こんなとこにラーメン屋が、、、梯子、、、いやいやいや次郎ちゃん、それはまずいよ次郎ちゃん。
次郎はひとり葛藤していた。
お客様、お会計。
突如沈黙は破られた。
次郎はここのところ食券制の店ばかり行っていたため、代金を払い忘れていた。
おぉ、すまんな。次郎は汗をかきながら代金を渡し、一目散に走り去った。
ふー、ここまで来れば大丈夫だろう。
なぜか喰い逃げした気分に襲われていた。
しかし、あのラーメン屋、気になるな。すごい煮干しの量と書いてあったが、、、まぁ今夜はやめとくか。先生も喜ぶだろう。
新しい期待に沸く次郎。
見上げた空の雲間から下弦の月が見えていた。
続く。
俺のハンバーグ@渋谷
上品な味のハンバーグ、丁寧な洋食屋さんというイメージで味付けは優しめ。レパートリーの一つに。
3.5次郎