食い倒れ 函館次郎のひとり飯道

函館次郎が世間の荒波に抗いながらひとり飯に命を捧げる物語

喜久美

くそ、もう間に合わねー!

次郎は予約していたジムに行くためバスに乗ろうと走っていた。

 

しかし、そのバスを逃すと確実に遅刻が確定し、ジムの時間が半分以下になる。

 

次郎は坂道を駆け下り、六本木通りに出た。バス停が見えた。しかし、乗るべきバスはまさに発進のウインカーを出したところだった。

 

ひぇー。

次郎は駆けた。しかし、健闘虚しくバスは悠然と走り出し、次郎と逆方向に通り過ぎて行った。

チキショウ、覚えてやがれこのクソ運転手!次は無いと思えっ!ありったけの罵詈雑言を運転手にぶつけた。運転手は、すがるようにバスを見つめる次郎に一瞥をくれるとそのまま走り去っていった。

 

ついてねーぜ。こんなに走ったってのに。

もうジムはやめだ。走ったし、それでチャラだ。しかし、走ったら、腹が減ってきたな。

ここは、どこだ?ん、西麻布か。西麻布は夜の街だからな。ランチなんて、、、?なんだあの薄汚い看板は。次郎は怪しい看板に吸い寄せられていった。

 

喜久美

 

なんだスナックか?しかしやってるみてーだな。思い切って入ってみるか。

次郎は小さな階段をあがり店内へ入った。

 

邪魔するぜっ。次郎は横スライドの扉を勢いよく開けた。

中には夫婦が二人。もくもくと食べる客が五人。狭い店内にひしめいていた。

メニューを見ると西麻布には珍しく良心的な値段の定食や単品メニューがたくさん書かれていた。次郎は迷ったが、周囲に目をやるとなぜかみんながカツカレーを食べていた。

 

く、他の奴らに迎合するのは柄じゃねぇ、、がしかし、うまそうだな。

よし、ここは衆愚共に合わせてやろう、おいババァ、カツカレー一つ、大盛りでな!それと焼きシャケもつけてくれ!

さっき走って消費したカロリーを台無しにする注文をした。

 

待つこと5分、カツカレーと焼きシャケが出てきた。

たっぷりとルーがかかり、カツもめちゃくちゃでかかった。シャケも単品からなのか、めちゃくちゃでかかった。

 

そそるな、これは。衆愚共でもうまい店は知ってるってか、無知の知か!

などとぶつぶついいながらルーのたっぷりかかったカツを次郎は飲み込んだ。

 

ぐぉ、なんだ、この甘い味は!それでいて後味はピリっとくる。このルーがカツの衣もドロドロにするのもまた絶妙だ。うめー、どんどんいけるな。

気がつくとあっという間に次郎はカツカレーを食べ終えた。付け合わせたシャケは良い塩加減で少し残ったライスと一緒にかきこんだ。

 

ゲフフッ、まだまだ日本も捨てたもんじゃねーな。

ジジィうまかったぜ。

釣りはいらねーよ。次郎は千円札をテーブルに叩きつけ、さっそうと店を出た。

 

ふー。いいもん食ったな、しかしまた腹が出ちまった。明日からジムにでもいくかな。

そう呟く次郎の目の前をゆっくりと虎猫が通り過ぎていった。

 

昼飯代は千円をゆうに越えていたのだった。

 

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 続く。

 

 

喜久美

@西麻布

カツカレーがうまし。

3.2次郎