その日次郎は千葉にある親戚の家へ朝早く向かっていた。
くそ、寝みー。なんだってこんな朝早くから千葉に行かなきゃなんねーんだっ。
ぶつぶつ愚痴りながら次郎を乗せた電車は乗り換え駅の西船橋に着いた。
ふー、こっから武蔵野線か、、。
と、その時次郎の目に駅構内の蕎麦屋が飛び込んできた。
朝も早かったし、なんだか腹が減ったな。
腹が減っては戦もできねーってか。
次郎は菜の花そばに駆けて行った。
券売機前でオロオロしているジジイを押しのけ、天玉そばの食券をスイカでゲット。
悪く思うなジジイ、今時スイカも使えないようじゃ、時代に取り残されるだけだぜっ。
そう呟きながら次郎はさっそうと店に入った。
次郎は席に座ろうと空いたイスを探しているとさっきのジジイが逆側の自動扉から入店し残り一席のイスを確保した。
くそ、リベンジか。舐めた真似を。
おい、ババァ、薬味大盛りで頼む。初老の女性店員はモゴモゴいっていたが、次郎はそれを無視して立ち食いスペースへ収まった。
はい、天玉おまち。
早いな。さすが立ち食い蕎麦屋だな。上等上等。意気揚々と次郎は天ぷらと蕎麦をかっこんだ。
ん、お、おい、こりゃうどんじゃねーかっ!俺は蕎麦を買ったはず、、、食券を見ると天玉そば・うどんと書かれてあり、食券を渡す時にそばかうどんを決める仕組みだった。
そうか、ババァがモゴモゴ言ってたのはこのことだったのかっ、次郎は不甲斐なさがこみ上げてきた。しかし、もう後の祭りだった。
えい、ままよ。次郎はうどんをむせながらかきこんだ。く、ここの天ぷらはサクサクで玉ねぎが甘いな。つゆもうめー。なおさら蕎麦を食いたかったぜ。悔しさを飲み込みながら天ぷらを飲み込む次郎。ほどなく、さっき押し除けたジジイが次郎の背後を通って帰るようだった。
人生焦ったら負けだ小僧。
去り際そう言い捨ててジジイが出て行く。次郎は天ぷらにむせ返っていたため怨みがましくジジイを見つめることしか出来なかった。
うっすらとした涙は天ぷらのむせが原因なのか、悔しさか、、、次郎にもわからなかった。
続く。
菜の花そば
@西船橋駅JR側構内
甘い野菜の天プラに生卵を落とした天玉そばがお勧め。他の駅構内のとこより旨い。
3.5次郎。