今夜は天ぷらが食いたい!
次郎は独り空を見上げた。
空は一面飛び散る雲。夕刻の太陽が所々に真っ赤な残穢を残すが、春の嵐の前触れか、逆に不気味だ。
沢山食べたい。ならば高級店ではなく、リーズナブル且つ胃もたれしない店。
つな八しかなかろう。
次郎は独りごちた。
行って見ると珍しく外に並びはない。
チャンスだ。
おう、次郎。何してんだ?
おう、三郎。奇遇だな。今暇か?
ああ。
よし、じゃあ天ぷら食おう。
そうだな。よし、行こう。
そういうことになった。
ガラガラ♪
二人だ。
少しお待ちください。
次郎たちは待合席に座った。
待つこと10分。
どうぞお客様。
テーブルに案内された。
まずは…いや、まずはというより始めから日本酒だな。
そして、コースは一番少ないコースに旬を追加することとしよう。
おい、ねーちゃん。
はい。
注文だ。
はい。
一番小さめの2100円のコースを2人前。中身はなんだ?
海老、キス、玉ねぎ、アナゴ、かき揚げ、香の物、ご飯と味噌汁です。
ふむ。いいだろう。
そして、それにな、メモの準備はいいか?
ハイ。
ふきのとう、揚げの納豆巻、カルシウム、牡蠣のピーマン巻…それと、鯛の何とかってやつとポロネギ、白魚海苔巻きを追加でな。
かき揚げの前に頼むぞ。
はい、かしこまりました。
ふー。
頼んだな。
ああ。
次郎達ははじめに運ばれてきた日本酒で乾杯した。
おお、三種の塩と天つゆだな。いいぞ。
はい、では最初に海老とキスです。
おお、いいじゃないか!うまそうだ。
どれどれ、
うん、揚げたてはうまいな。サクサクだ!
順番に持ってきてくれるのがいいなこの店は。
キスも魚臭くなく、うまい。
やはり塩だな両方。
ふきのとうです。
ほう、うまそうだ。
シャキシャキして、甘い。
さすが春が伝わってくるな。
続いて納豆巻きです。
ほう。
うまそうだな。
納豆と揚げは合うなぁ。うまい!
牡蠣ピーマンです。
おお、レモンが効いてるし、ピーマンのシャキシャキと牡蠣の柔らかさが熱々で素晴らしい組み合わせ。うまいぞ!ねーちゃん。
ありがとうございます。
鯛の✖︎@%☆○です。
ん?なんだっけ。まぁいいか。
うん。鯛の皮を立たせて焼き目をつけて揚げてあるのか。
手の込んだ品だな。うまいぞ。
ポロネギです。
おお!これよこれ!
肉厚のネギ、シャキシャキで甘い。
最高だな。
白魚海苔巻きです。
おお、ぎっしりだな!寿司を揚げたみたいなビジュアルだな。
うん、見た目通りぎっしりとして、うまい。
うーん。幸せだな。
な、三郎。
あぁ、違いない。
二人は会話らしい会話もしないまま、黙々と食べ続けた。
では、そろそろかき揚げとご飯にしてよろしいでしょうか?
ねーちゃんが恐る恐る聞いてきた。
俺たちの胃袋は宇宙だってか。ははっ!
おう、そうしてくれ。
そう言ってから五分。
お待たせしました。
来たな。少し小ぶりなかき揚げだな。ただ、胃袋にはちょうどいいな。
よし、まずは一口目。サクサクだ。
しかしだ。やはりこれだよな。
次郎はおもむろにかき揚げをご飯に乗せ、上からドボドボと天つゆをぶちまけた。
ふん、これよこれ。
燦然と輝くかき揚げご飯。
次郎は一気にかき込んだ。
うーん。うまい!
ズズズズッ
味噌汁で、締まったな。
完璧だ。
次郎、完勝だよ。
だな。
満足し切った二人。
おい、ねーちゃん会計だ。
出口でお願いします。
おうよ。
お二人で10800円です。
ふん、そんなもんだろうな。
宵越しの銭はもたねぇ主義でな。
まとめてとっときな!釣りはいらねーよ!
次郎は三郎の分もまとめてきっちり10800円をレジの皿に叩きつけた。
いやー、リーズナブル且つ胃もたれ、うまい。最高の夜だな三郎。
だな次郎。
ほらよ半額だ。
サンクス。
ガラガラ♪
店を出たふたり。
ゲフッ
流石にきついか。
次郎、じゃまたな!
ああ、またな。
三郎は去り際も潔い。
ふぅ。
さてと、帰るかな。
ビュー!
うおっと。
さすが風が強い。嵐の前触れだな。
早目に帰るとするか。
次郎はいそいそと、新宿三丁目駅に消えて行った。
続く。
つな八@新宿三丁目
老舗の天ぷら屋。そばに同じく船橋という天ぷら屋があるが、味も雰囲気もこちらが上。値段はリーズナブル。沢山食べたい時にピッタリ。
3.7次郎