函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

宮川赤坂 うなぎ

ガラガラ♪

 

次郎はおそるおそる扉を開けた。その扉はガラスが差し込まれているため重かったが、うなぎ屋という響きと店の料亭風の門構えが重々しさに輪をかけた。

 

はい、いらっしゃいませ。

 

予約などしてないのだが…

 

はい、結構ですよ。

にっこりと白髪交じりの女将に言われ、次郎はカウンターへと誘われた。

 

カウンター内では職人が魚をさばいていた。

 

次郎は、店内に貼られたおすすめ料理を見て、女将を呼んだ。

 

おい女将、山菜天ぷらと、大根とつくねの煮物を頼む。それとビールはキリンオールフリーを頼む。

 

次郎は、まずは女将にジャブをかました。

 

ふー、まずはこのくらいだろう。いきなり鰻重にいかないことで通らしさを演出だ。

 

さてと…ここからだな。

 

あ、あの、このいろはにというのは?

 

大きさによって変えてます。

 

なるほど。そういうことなんだな。

じゃあ、ここは、1番小さいのでいいだろう。

 

では、このイを。

はい、かしこまりました。

 

次郎は疲れていた。連日飲み会が続き睡眠不足の上、会う人も多く、仕事もそれなりに忙しかった。

 

そのおかげで体調を崩した。喉が痛く、鼻水が出る。体もだるかった。しかし、まだまだ飲み会はつづくため、こんなところで倒れている場合ではなかった。

 

次郎は考えた。もう精力をつけるしかない。であれば、それは、、、

 

それはうなぎだろう。

次郎は独りごちた。

 

しかし、客が少ないな。なかなかうなぎは食いに来ないか…次郎は眠くなり目を閉じた。

 

はい。大根とつくねの煮物です。

突如沈黙は破られた。

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ほう。こりゃあ上品でうまそうだな。

大根は出し汁がしみていてうまいな。つくねもいい。

 

山菜の天ぷらです。

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ほう。上品な。どれどれ。

次郎はこごみを頬張った。

うまいな。上品だ。

 

そうこうしている間に鰻重が登場した。

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真打ち登場だな。この蓋が期待を煽るぜ。

パカッ!

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ほほう!!これは旨そうだな!匂いもイイ!

山椒をかけてと…

どれどれ、お手並み拝見だ。

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んん!うまい!山椒も効いて、うまさ倍増だ!

柔らかくて、タレも絶妙だ。これはうまい。精力頂戴!だ。

 

肝吸いも、味がしっかりしてて、うまい!更に精力頂戴!だな。

 

ゲフッ

いやー食ったな。これで風邪も治るだろう。

女将、うまかった。会計だ!

 

はい、かしこまりました。

次郎は金を払い店をでた。

 

ガラガラ♪

 

さぶっ。外はやっぱり寒かった。

まだまだ冬は開けそうにない。

 

俺の冬もしばらく続きそうだ。

次郎は独りごちた。

 

コートの襟を立て、地下鉄に次郎は消えていった。 

 

続く。

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宮川赤坂@赤坂

老舗のうなぎ屋。上品な味のメニューばかり。どの品も少し小ぶりだか、味はいい。混んでもいないのですぐ取れそうなのもいい。

3.4次郎

 

とりかつ 定食屋

う、浮かれやがって。

 

世の中がバレンタインデーの夜、次郎は一人渋谷の街を歩いていた。

 

昼間次郎は上野の森で絵画をみていた。
次郎は考え事をするときは上野の森にいくことが多かった。木々に囲まれた道を歩き、ふらりと美術館に入る。平日の昼間、特別展でもなければ美術館はひっそりとして、なんだか絵画と対話しているようなそんな厳かな気分になれた。

 

次郎はベネチア派から印象派を得意分野としていた。とくにティッツィアーノが好きでフィレンツェにも彼の絵画を見に行くこともあった。

 

日本は特別展でもない限り、名画と世界で呼ばれているものはなかなか見る機会がなかった。しかし、東京のここ上野は東京都美術館があり、その機会が比較的多かった。

 

次郎も絵画を見に行くことが増え、気がつけば足繁くこの森に通うようになっていた。

 

ひろびろとした場所にでると冬の針葉樹が全て葉を落とし、木々は寒々しさを感じさせた。しかし同時に、時の流れが絶え間なく動いていく躍動感のような、ある種の熱も木々は孕んでいるのだった。

 

ふー。やはり落ち着くな。スタバのコーヒーの匂いがなんだか心地よく感じるぜ。


芸大生が楽器を練習し、大道芸人がジャグリングの練習をしており、その練習風景を通りすがりの人が囲む。まるでパリの公園だ。


そばにないのはセーヌだけか…
次郎はひとりごちた。

 

 

しかし、まだまだ寒いな戸外は。
さてと、充分英気は養ったし、何か食うか。
そういえば上野にはうまいとんかつやもあったけどな。

だが、なんとなく気分は上野を離れたがっていた。

 

次郎は森を抜けて、街を抜けて地下鉄に降りた。銀座線に乗り、渋谷方面を目指した。


ガタンゴトン♪

次郎は眠りに落ちた…

 

 

ガタン。

うぉう。


ふー、寝ちまったか。ついたようだな。

次郎は渋谷に降りた。

 

街は次郎とは無縁のバレンタインデーだった。

浮かれやがって。ふっ、まぁ平和な証拠だろう。

さてと。どーするかな。


次郎はバレンタインの喧騒を離れ、道玄坂を登っていった。

 

百軒町か。せせこましい、歌舞伎町の裏のような、そう、パリのモンマルトルのような場所だ。

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怪しいホテル街の入り口で、次郎はある看板を見た。

なんだか見たことのある看板だ。看板というか文字だ。


とりかつ、とりかつ、、、

 

おぉ、そうだ、前に一度行ってみたいと思っていたB級定食屋の名前じゃねーかっ!
こんなとこにあったとは。しかし、どこに店があるんだ?  あぁ??

 

次郎は聖バレンタインに向かって叫んだ。
よく見ると看板の裏に細い道があった。

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む、奥か。

次郎はいぶかしみながらも小道に入っていった。

そこの小さなビルにさらに案内は続いていた。

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なんだか迷路だな。それもよかろう。
おぉ、あったな。

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ガラガラ♪
次郎はドアをあけ、そばのカウンターに座した。

古い。だが味のある店だ。
中はアジア系の中国人やマレーシア人がいた。そしてバンドマンも、もりもりと揚げ物を食べていた。

 

ほう。いいなこの感じ…

 

お客さん、何にする?
突如沈黙は破られた。


う、あ、ええっ、

次郎は不意打ちをくらった。前を見ると揚げ物3品800円、4品1000円、人気定食650円…と貼り紙があった。

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 よし、4品だ!

 


どの4品??

く、続けざまのジャブ。やるな、オヤジ!

 

 

と、とりかつ、カニクリームコロッケ、メンチ、、、それと茄子だ!
えいままよ、次郎は目に付いたものから順に連呼した。
た、確かとりかつが有名なはずだ。

 

冷や汗が出たぜ。まさか相手から求められるとはな。

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ガラガラ♪

ひとり、またひとり中年おやじたちが集まってくる。隣に座った髪撫でつけメガネおやじを一瞥し、次郎は目を閉じた。

 

ふん、おまえのように俺はならんのだよ。同じことをしても格がちがうのだ、ツマラナキ者よ。

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はい。おまちど♪

突如沈黙は破られた。

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ほう。満載だな。しかし、バカ盛りではない。味噌汁とご飯か。味付けはソースと醤油だな。シンプルだ。

 

次郎は醤油をかけ、とりかつを口に入れた。

サクッ

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ほう。衣が薄くてサクサクだな。やるじゃねーか。とりだけに軽くていいな。軽やかだ♪

 

サクサクッ

 

メンチも重苦しくない。そして、ハムカツか。

 

サクッ

 

ふん、これは衣をつけてもつけなくてもいいが、なんだか懐かしくていいな。

 

サクッ

最後はカニクリームコロッケか。

うまいじゃねーか。これはおやじたちは来ちまうな。そしてコスパも悪くない。飯の量も多い。

 

ゲフッ。

ふー、食ったな。

周りを見るとすでに中年たちは消えていた。

俺の妄想だったのか…いやいや、そんなことはあるまい。俺の輝きについてこれなかったツマラナキ者たちよ。

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おい、おやじ!ちょうど千円置いてくぜ!

次郎はカウンターに千円札を叩きつけ、扉を開けた。

 

ガラガラ♪

 

おぅっ

すれ違い様にわけのわからない言葉をしゃべる男女が入っていった。

 

ふん、今夜はバレンタインだ。景気よくやりな!

4品以上でな!

 

次郎は道玄坂に出て、坂を足早に下っていった。

 

様々なネオンが、渋谷にわだかまる大小の思惑を照らし出していた。

 

続く。

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とりかつ@渋谷百軒町

昔ながらの揚げ物屋。メニューは揚げ物のみ。このコスパにもかかわらず若者はあまりおらず、中年サラリーマンと外国人に支配されている。味はなんてことないのだが、なんだかクセになる。再訪の予感。

3.4次郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覆面智⑥ 牛テール塩ラーメン

終わった…

 

ふと時計を見ると午後5時。定時だった。

ふー、俺の生産性もみるみるうちに上がってるぜ。

 

定時♪ 定時♪ 銭形定時♪

ってんだコンチックショー♪

次郎は自席で独りごちた。

 

さっさっと職場からオサラバだ。

次郎は職場から出ると六本木駅に向かった。

 

ふー、まだ5時か。

定時に終わると1日は長いな。これはいい。

さてと、定時に終わった次郎さんは何を食うかだな。

 

定時、定時、、、

歩きながら思いを巡らせる次郎。

定時、定時、、、、、、

 

定時、テイジ、テージ、テージ…

 

テール!?

 

まさか。

いやまさかな。

 

次郎はスマホをいじった。

 

な、なんてことだ、、、

今日は金曜日だった。

 

金曜日は牛テールスープの日じゃねーか!

 

 

 

次郎は日比谷線を日比谷で乗り換え、三田線に乗っていた。

 

来ちまった…

 

100の後悔より一杯の幸せ。

…負けだよ。

 

ガラガラ♪

 

らっしゃい!

 

お、オヤジ!

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はいなかった。代わりに弟子がいた。

次郎は牛テールスープのボタンを押した。

 

煮卵、青唐辛子、それとモヤシを頼むぜ。

強気だった。

 

次郎は、麺の湯切り音を聴きながら目を閉じた。

 

はいよ。お待ち!

突如沈黙は破られた。

と、同時に右耳の至近距離、通称次郎ゾーンに人の気配を感じた。

 

 

お、オヤジっ!!

目を開けるとオヤジが次郎を見ながらニヤついていた。

 

珍しいね。夜にご登場かい?

 

あ、いや、仕事が、その、早く終わって…

接近戦は苦手な次郎だった。

 

い、いただきます!

次郎はいたたまれず、ラーメンを食べ始めた。

ズズッ、ズズッ

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牛テールは塩味だった。獰猛なスープが透明な色に隠されていた。テールの濃厚な味わいが口に広がった。

 

いつもの醤油とは違うな。また別のうまさだ。とても濃厚だ。

 

そして、この牛テールだ。

どれどれ。

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な、なんと!

柔らかく、そして獰猛だった。口の中に入れると牛テール独特の味とほろほろ具合が舌を楽しませた。

 

う、うまいなこれ。

お、オヤジ!

 

ズルズルッ、ズズズッ

ズズズッ、ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズッ

 

ぐおー、チャーシューもいつも通りうまい!牛と豚のコラボだ!モヤシもシャキシャキだー!

 

銭形定時の甲斐があったぜ、ハチっ!

次郎は独りごちた。

 

ズルズルッ、ズズズッ
ズズズッ、ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズッ…

 

ゲフッ。

 

ふー、また全部たべちまった…ダイエットはどこえやらだな、ハチッ。

 

ごちそうさんと。また来るぜオヤジっ!

とその弟子よ!

 

ガラガラ♪

 

ふー。まだ5時半か。神保町もラーメン屋が増えたな。神保町の駅前にはラーメン屋の看板がたくさんできていた。

 

一杯の幸せは、いつしか100の幸せに変わるのかもな。

 

そんなことを思いながら次郎は夜空を見上げた。

 

雨上がりの空には、幾つかの星が瞬き始めたばかりだった。

 

まだまだ冷えるな。

次郎は神保町の地下鉄の構内に消えていった。

 

続く。

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覆面 智@神保町

金曜日は牛テール塩ラーメン。通常の覆面に比べるとすこしコッテリ。牛テールが強いインパクトを与え、塩ラーメンであることを忘れてしまう。うまし。

3.8次郎

 

 

おまかせ亭 洋食屋

まだまだ寒いぜ。

次郎はチャリンコに乗りながら渋谷を疾走していた。コートのボタンが留めることにより、ボタンが取れてしまうことを防ぐため、全開のまま疾走することになり、北風が次郎を切り裂いた。

 

くー!

身を切るぜ!

何を食うかなー!

 

疾走しながらならば、何を食うか叫んでも誰も気づかない。俺は自由だ!

次郎は感じていた。

 

しかし、何を食うかだなー!

再び叫んだ。だいぶ回ったからなぁ渋谷も。次郎は坂に差し掛かったところでスマホをいじった。

んー、ほうほう。まだ行ってないところが。

よし、今夜はここにするか!

 

次郎は急坂をチャリンコを押して登った。

はぁはぁ。

息切れしたところで、件の店についた。

 

おまかせ亭。昼はオムレツライスで有名な店だ。夜はどうか…

 

カランコロン♪

 

ドアを開けると地下に道は通じていた。

いらっしゃいー。予想に反して気の良さそうなおっさんが迎えた。

次郎は席に通された。

 

コートは逆側にかけて、鞄は箱に入れてください。

いきなり指示が飛んだ。

 

…まぁいい。

メニューはと…

 

ほうほう。アラカルトだといい値がするな。ここは1980円のカジュアルコースだな。オムレツライスも選べるようだしな。

 

よし、カジュアルコースでオムレツライスだ。そして、タコのイタリアンも頼む。

 

はいよ!

小気味いい声だった。

 

しばらくするとすぐにサラダが来た。

ほう、プチとあったのにボリューム満点だな。合格だ。

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味はまぁ普通だな。しかし、里芋と春菊がうまいな。

 

続いてタコのイタリアンです。

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ほう。これはうまそうだ。スプーンで食べるのも気が効いてるな。

いい酢加減だ。タコも食べやすい。野菜もシャキシャキしてるな。すぐに食べきってしまいそうだ。うまいな。

 

ふー。

 

では、コンソメスープです。

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ほう、口直しか。いいな。アッサリ系だな。

 

さてと、このコース、かなりのボリュームだ。好感が持てるな。

 

はい、お待たせしました!

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きたな!ほう、ソースは後かけだな。

いいじゃねーか。

どれどれ。

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卵がプルプルだな。

ん、うまい。ソースがアッサリして水っぽいがいい味付けだ。トマトも効いてるな。食べやすい。

どんどん食べれちまうな。

 

これは当たりだな。他の洋食もいけそうだ。

ふー、さてと、、、

 

はい、デザート。

あ、デザートがあったのか!

なんてボリュームだ。

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チーズケーキは手作りなんです♪

 

そうか。では食べてやるか。

 

おぉ、甘すぎずうまいな。コーヒーもいい。

 

コーヒーじゃんじゃん飲んでください。器ちっさいんで笑

おっさんが言ってくれた。

 

そうか。気前いいな。次郎はコーヒーを何杯もお代わりした。その度におっさんが小気味好く入れてくれる。

 

なかなかいい店だ。人柄がにじみ出ている。

また来るか。

なんだか暖かい気分になった次郎だった。

 

さて、会計頼む。

 2700円です。

 

ふー、うまかったよオッサン。また来るぜ!

 

カランコロン♪

 

次郎は階段を登って、チャリンコに乗った。

再び前方全開のコートをはためかせ、246号を疾走した。

 

まだまだ冬は終わりそうにない。

 

続く。

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おまかせ亭@渋谷

オムレツライスで有名な洋食屋。ランチは混雑。夜は穏やかでよい。おじさんたちのサービスがあたたかい。また来たいな。

3.6次郎

 

 

 

 

 

 

 

かき心

今日は、早く終わったな。

 

時計は17時30分。夜はこれからだった。

 

何かうまいもんが食べたいな。

いつもはここで、ハンバーグ、スープカレー、とんかつの三択になっちまうんだよな。

そうやっていてはいつまで経っても成長しねぇ。成長戦略とやらを立ててみるか。

 

んー、浮かばんな。

そもそも何が成長なんだ。あぁ?

次郎は、六本木の夜空を見上げ独りごちた。

 

んー、浮かばんな。三種の神器を食べないという決意が大事かもしれんな。何かべつのもの。

 

冬。

冬、、、ネギ!

んー、こないな。ちゃんこ!…ひとり鍋はなぁ。一度ググってみるか。

冬、食材。

 

 

長いな。

グーグルも俺と同じ気持ちか…おのれの成長を考えているらしい。

 

 

出た!

 

おぉ!

これは。よし、早速このワードを使って…ほうほう、出てきたな。開店して間もないな。よし、早い時間だし大丈夫だろう。

 

次郎は芋洗坂を駆け上がった。

 

ふう。どこだ?

おぉ、これか、次郎は六本木通り沿いの雑居ビルの地下に駆け下りた。

 

ガラガラ♪

 

いらっしゃいませ。

和服の若い女性が応じた。

 

ほう。こじんまりしてるな。

一人だ。予約はない。

 

…ハイ。かしこまりました。

次郎はカウンターに通された。

 

座るやいなや、

ごめんなさい!

ご飯がまだ炊き上がらないのですこしお時間いただきます。

 

先制攻撃。

ユリオカ封じか。まぁいい。今夜は時間がある。

じゃ、ハイボール。それと…

 

よし、この牡蠣フライのコースで。

 

はいよ♪

 

まずはお通しを。

タコとイカの塩辛だった。

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予想に反して、しっかりと味がついていた。うまい。これは先が期待できる。

次郎はあっという間に食べた。

 

横を見ると前園のサインがおいてあった。

「おいしい!」

と書いてあった。

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あの天才ドリブラー前園が、ただ一言、おいしい!と書くくらいだ。きっとオイシイのだろう。前園、安らかに。次郎は目を閉じた。

 

 

 

では、二品目は筑前煮です。

カウンターから愛想のいい大将が提供した。

お待たせするので大盛り二倍!

 

おぉ!これはでかい。嬉しいな。

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ご飯が炊き上がらないというだけで前菜がどんどん出てくる。いいぞ。ハードルを上げておいて喜ばせるアップダウン作戦だな。

 

ふん。うまいじゃねーか。牡蠣の出汁もきいてるな。どんどんいけてしまう。ここは当たりだ。

 

はい、では、牡蠣フライです!

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おお、サクサクそうだ!

結構ボリュームもある。

次郎は箸を入れた。

 

サクッ!

 

いい音がした。

うまそうだ。

次郎は牡蠣フライを口に放り込んだ。咀嚼するや否や牡蠣の出汁が溢れだし、塩味の効いたサクサクの衣と素晴らしいハーモニーが奏でられた。

 

こりゃたまらん。塩とポン酢が付け合わせであるが、なぜか既に塩味が効いている。これはうまいぞ!!

こーなると飯が…

 

 

ハイ、お待たせ!サービスで白飯じゃなくて牡蠣の炊き込みごはん♪

 

おぉ、大将!気が利いてるな!

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うまい!炊き込みごはんたまらん。

そして、付け合せのすまし汁にも牡蠣が入っていた。

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いやー、ここまでくると完敗だ。完璧な戦略だ。ひとりで味わうにはもったいないな!

 

次来るときは……

次郎の箸が止まった。

 

いかんいかん、そんなことは。いやいや、それはない。それはいかん…

次郎は脳内でひとり逡巡した。

 

 

思い直して残りの牡蠣フライと炊き込みごはん、すまし汁を平らげた。

 

いやー、腹一杯だ。最高だったな。この感じをずっと続けてほしいな。人気が出すぎないことを祈るぜ。今日食べれなかった鍋も気になるし。

次はあの鍋を…い、いかんいかん、、

 

大将会計だ!

 

はい、3200円です。

 

なに!!!!!

そんなに安いのか!

これはまずいな。また来るに決まってるだろ〜が!

 

次郎は和服美人からコートを受け取ると、羽織らないまま階段を駆け上がった。

 

時刻は20時。六本木通りに出ると、街はまさにこれからが本番だった。

 

次郎は意気揚々と六本木交差点に向かって歩き出した。

 

背後から煌びやかなリムジンが次郎の横を通り過ぎた。

 

何が成長か。

再び考える次郎だった。

 

続く。

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かき心@六本木

コスパ半端ない。そして、うまい。大将も明るい。カジュアルな会合向きか。牡蠣好きを連れて行きたいお店。

3.8次郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハノイのホイさん

ホ、ホイさん!

 

次郎は渋谷にいた。

今日の仕事が六本木ヒルズにあり、そこから家に向かう途中で下車する予定が渋谷直行便のバスに乗ってしまったため、渋谷についてしまった。

 

く、くそ、ぼんやりしちまってたぜ。

冬の寒空の中、ケヤキ坂のイルミネーションは、一人者の次郎には余計に寒々しく映った。

 

しかし、渋谷は一人飯の宝庫。六本木よりもレパートリーは多い。次郎はこの偶然を密かに楽しんでいた。

 

やはり、サッカーにしろ何にしろ、人生は切り替えが大事だ。

 

しかし、最近数値も上がってるな。ヘルシーで且つうまいものはないもんか…

 

 

ラーメン!!

は最も対極だしなぁ。

 

し、しかし、

ラーメン、ラーメン、めん、めん、麺…

 

そ、そうか!

あったぞ!

 

 

次郎は渋谷南口に出て、歩道橋を駆け上がった。そして、駆け下りた。更には坂も登った。

 

はぁはぁ。さすが渋谷。谷だらけだ…

 

はぁはぁ。あったか!

ホイさん!

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ベトナムフォーの店だった。

 

 

ガラガラ♪

 

イラッシャイ、

 

次郎はカウンターに座した。

牛肉フォー!!

座るや否や迷わず発注した。

 

ここハノイのホイさんといえば牛肉フォーだ。すこし生の牛肉と、モヤシ、パクチーがたまらんのだ。

 

ふふ、ねーちゃん、モヤシとレモンをトッピング追加だ。

 

ハイ、カシコマリマシタ。

ベトナム人女性が答えた。

 

 

ふー。

空腹に我慢しながらも次郎は目を閉じた。

 

 

ハイオマチ!

突如沈黙は破られた。

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おお!

来たな!うまそうだ!モヤシもシャキシャキだな!パクチーもいい匂いだ!

 

そして、このスープがスッキリしてて味もキリッとしてるんだよなぁ。肉も脂っこくなくていい。

 

そして、このオレンジ色の謎のタレ。

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酸っぱくてなんともいえない味だ。残り半分くらいから入れるのが通なんだよな!

 

んー、麺もスルスルはいるな。余計な匂いもないし。これはきっとヘルシーに違いない。

 

これで俺も明日から健康体だな。かっかっかっ!

 

次郎の高笑いが店内に響いた。

 

 

さてと、いい具合に汗もかいたな。

よし、会計だ!

 

910円です。

うん、手頃だ。

今日はいい締めになったな。

 

ガラガラ♪

 

んー、帰りは下り坂だな。

フォッフォッフォー♪

 

冬の空に次郎の駄洒落が響いた。

 

続く。

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ハノイのホイさん@渋谷

ベトナムフォーの店。かなりうまい。味がスッキリしてるが本場っぽい。フォーはヘルシーうれしー!です。必ずオレンジのタレを後半に入れて欲しい。

3.7次郎

 

 

 

 

 

 

覆面智⑥ オマール海老塩ラーメン

お、おやじ!

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次郎は何気なく行きつけのラーメン屋の大将がやっているツイートを見ていた。

しかし、前回の時と同様、いきなりのオマール海老写真。

 

く、くそ、お、おやじ…

次郎は、洗濯をし、気を紛らわした。

次郎は、掃除をし、ツイートを忘れようとした。

次郎は、食器を洗い、海老を思い出さないように努めた。

 

ふー、家も片付いたな。

く、となりゃぁ、行くしかねーだろーがっ!

負けだよ、おやじ。

次郎は独りごちた。

 

次郎はコートを羽織り、綺麗になった部屋を出た。

いい天気だった。絶好の、ラーメン日和になっていた。

 

いつものように、神保町の駅を駆け上がり、黒ウーロン茶を買った。戦闘態勢万端だった。

 

お、おやじ、、

例によって店の前にはツイートでみたオマール海老がおいてあった。

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ふー、大盛りだな。

またも次郎は呟いた。

 

ガラ♪

 

おぉにいちゃん、来たね!

 

見透かされていた。

次郎は先生パンチをおやじから食らった。

 

お、おやじ!

 

次郎は普段はないトッピングの肉ワンタンも追加し、カウンターに座した。

 

トッピングは、海苔、青トウガラシ、それに煮卵だ!

 

あいよ♪

 

小気味のいいやりとりだった。

 

ふー。次郎はこのワクワクに身を任せ目を閉じた。

 

はいよ。

突如沈黙は破られた。

 

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くー、塩ラーメンのいい匂いがした。肉ワンタンもうまそうだった。

 

次郎はスープを一口すすった。

あっという間に口に海老の香りが広がる。

 

くー、来た甲斐があったぜ。うまいぜおやじ!

 

あいよ。うめーよなぁ。

 

おやじも頷いた。お前が作ったもんだろーが…しかし、うまい。塩の味がスッキリした味にし、それに海老がうまくマッチしている。

さらには、青トウガラシがまたいいスパイスに。

 

たまらねぇ。やっぱり幸せは間違いなく今ここにある。次郎は心の中で呟いた。

次郎が煮卵を掴むと、煮卵が弾け、緩やかな黄身が飛び出た。これがまた黄色ちぢれ麺に絡まりまろやかな味が口に広がる。

 

だめだ、こりゃあ!!!うますぎるぜオヤジっ!

 

ふー。大満足だ。いや、大満足です。

敬語を使わざるおえんだろう。

次郎は心の中で呟いた。

 

さてと、じゃあなオヤジ。今日もいいもん見せてもらったぜ。また来週来るよ。

 

ガラガラ♪

いってらっしゃーい♪

 

扉を開けて出た次郎の背中に、オヤジの暖かい声が追いついた。

 

時刻はまだ12時。

冬の暖かな陽光が次郎を照らしていた。

 

続く。

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覆面智@神保町

今日はオマール海老出汁の塩ラーメン。まずいわけがない。海老の風味が満点で、トッピングの肉ワンタンが絶品。今月は毎週火曜日がオマール海老出汁。

3.8次郎